海外駐在は昇進に不利なのか?評価構造から考えるキャリア戦略

勤め人


海外駐在を経験しても、思ったほど昇進に結びつかないと感じる人は少なくない。
これは個人の能力や努力の問題というより、企業の評価構造に起因するケースが多い。

1.海外駐在が評価されにくい3つの理由

① 本社中心の評価構造

まず、JTCでは昇進判断の多くが本社を中心に行われる。本社に近い人ほど日常的な接触機会が多く、意思決定層への可視性も高い。一方、海外駐在者は成果の数字こそ共有されても、そのプロセスや難易度までは十分伝わらないことが多い。結果として評価密度が薄くなり、昇進スピードに差が生じやすい。

② 可視性の非対称(プロセスが見えない問題)

海外でP/Lを持ち、組織を率い、市場と向き合ってきた経験が、必ずしも昇進や評価に直結するわけではない現実がある。
成果は共有されても、意思決定の重みや葛藤までは伝わりにくい。評価は結果だけでなく「見えている時間」に左右される。

③ 評価軸の違い(国内と海外の能力差)

国内では組織調整力や社内ネットワーク形成が重視されやすいが、海外では市場開拓力、異文化マネジメント、制度対応力など、より実務的で不確実性の高い能力が求められる。
ところがこれらは本社側からは見えにくく、「特殊経験」として扱われることがある。

本社中心評価という構造問題

日経新聞には「私の課長時代」という企業トップのインタビュー連載があった。多くの経営者が若い頃の海外駐在経験を語っていた。当時は「トップは海外を経験している」という印象が強かった。

しかし実際には、海外でP/Lを持ち組織を率いた経験が、必ずしも昇進に直結するわけではない企業も多い。
評価構造そのものが、本社近接型に設計されている場合があるからだ。

海外駐在は本当に不利なのか?

海外駐在は本当に不利なのか。
答えは単純ではない。昇進という指標で見れば不利に働くこともある。しかし、市場価値という視点で見れば、むしろ大きな資産となる可能性がある。

海外経験を資産化する3つの視点

昇進が必ずしも海外経験の重みを反映しないのであれば、視点を変える必要がある。
組織評価とは別に、自分自身の資産を積み上げるという考え方だ。
私は海外駐在を通じて、三つの資産が形成されると考えている。

① 自己資産 ― 海外での実践的マネジメント

現地法人の運営、代理店の再構築、制度の異なる環境下での意思決定。

国内の延長線ではない不確実な市場で、P/Lを背負い、組織をまとめる経験は、極めて再現性の高い能力になる。

これは役職ではなく、経験の蓄積である。

組織内の評価がどうであれ、市場では通用する「経営の型」が身体化される。

② 人的資本 ― 海外ネットワークの人脈という資産


代理店オーナー、現地ナショナルスタッフ、金融機関、ローカルパートナー。

長期で向き合った関係は、単なる名刺交換ではない。

海外で築いた信頼関係は、将来的にビジネスの再現可能性を高める。
市場が変わっても、人との接点は残る。

これは組織内評価とは無関係に、個人に帰属する資本である。

③ 金融資産 ― 駐在待遇を最大化


海外駐在には、多くの場合、駐在手当や住宅補助、税制上の優遇がある。

この期間を単なる生活水準の向上に使うか、将来の資産形成に振り向けるかで、長期的な自由度は大きく変わる。

私は、駐在期間を「資本蓄積期間」と位置付けるべきだと考えている。

昇進が不確実である以上、経済的自立の基盤を並行して築く。
これが心理的余裕を生み、意思決定を冷静にする。

昇進と資産を切り分けるという視点

昇進は企業の評価構造に依存する。

一方で、海外経験をどう資産化するかは個人の戦略に依存する。

海外駐在をキャリア上のリスクと見るか、資産形成の機会と見るか。
その判断は、評価構造を理解しているかどうかで大きく変わる。

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