海外駐在で大事な心得

勤め人

海外駐在になると、多くの人が「昇格」する。職位がひとつ、ふたつ上がるのは当たり前。近年は人手不足もあり、さらに高いポジションでの赴任も珍しくない。
突然、仕事のフィールドが広がり、部下の数も増える。新たな責任を前に「やる気」と「不安」が入り混じる──そんな駐在員は多いだろう。


1.本社の期待と  現地の現実との違い

海外赴任者がまず直面するのは、「日本本社の要求」と「現地での現実」とのギャップだ。
数字・品質・スピード、どれも日本基準で求められるが、現地には現地の文化、制度、人材事情がある。
この2つが一致しない場面は多い。


そのとき、最優先すべきは
「現地でのアウトプット」だ。
つまり、「現地のチームを動かし、
成果を出すこと」である。


2.あなたは観察されている

赴任初日から、ナショナルスタッフ(現地社員)はあなたを見ている。
「この日本人マネージャーは何ができるのか?」
「本社の言いなりで、仕事を押しつけるだけなのか?」
「自分たちの課題を理解しようとしているのか?」
──すべてが静かに観察されている。

この時期に信頼を得られるかどうかが、その後の駐在生活を左右する。
初期に必要なのは、
“決断”ではなく“傾聴”だ。
彼らが抱える問題を正確に把握し、
解決策や方向性を示す。
それが「リーダーとしての第一歩」になる。


3.同胞の“連携力”が問われる

海外では、取引先が日系企業であるケースも多い。トラブル時には「日本人同士での調整力」が試される。
解決案や妥協点をまとめ、現地チームと本社の両方を納得させる力が必要だ。
ここで上手く立ち回れないと、
「仕事ができない日本人」というレッテルを貼られることも少なくない。


4.英語力よりも“伝える力”

「英語が苦手でも大丈夫」と言う人もいるが、チームマネジメントの現場では“伝える力”がすべてだ。海外どの国でも共通言語は、殆どが英語である。
「何を」「なぜ」「どうしたいのか」を明確に伝えられないと、
“リーダー失格”の烙印を押されることすらある。

語学力よりも重要なのは、相手が理解できる言葉で、誠実に伝える姿勢だ。
誤解なく、曖昧なく、丁寧に。
これが、異文化マネジメントの基本である。


5.最初の半年で  「信頼の軸」を築け

海外駐在は、最初の半年で
ほぼ結果が決まる。
現地スタッフの信頼を得るか、失うか。
その見極めが終わると、立ち位置の修正は難しい。
中には、早期帰任になるケースもある。
だからこそ、最初の半年は観察されている自覚を常に持つことが大切だ。


6.まとめ

海外駐在は、単なる出世コースではない。
日本では見えなかった“人間としての器”が露わになる。
現地スタッフ、日本本社、取引先──
三者の間で信頼を繋ぎ、チームを導く力が求められる。
その経験は、キャリアの中でもっとも濃密で、もっとも成長できる時間になるだろう。

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